「よう、マイト。調子はどうだい? そうかい、そりゃご愁傷様だ。俺は、ああ、ひどくいい気分さ。ん? なぜかって。おいおい慌てるなよマイト。今から話すさ。実は俺、日曜の夜になると、なぜだか判らないけれどむしゃくしゃして、憂鬱になるんだ……。昨日なんて、そりゃあもう、いつもより激しかった。そうだな、だいたい新婚夫婦くらいだと思ってくれ。あまりにもひどいもんだから、なかなか寝つけなかったよ。もちろん朝起きても、最悪な気分はあいかわらず……というよりむしろさらに憂鬱だったさ。あまつさえ、働く、という意味すらわからなくなっていたんだ。本当だ、信じてくれマイト……。起きたら10時を過ぎてたのは気のせいなんだって。いや、まあ、ほら、それは俺も悪いと思ってるけど……。とにかく今日はもう、無理だった。絶対に、完璧にだ。布団からは出ない。ユウコ・オグラにだってこの意志は曲げられない。それぐらいに堅かった。ちなみに俺は、右曲がりだ。でも残念なことに、あまり堅くはならない。おおっと、今のは笑うところだぜマイト。ふん、話を戻そう。うまい言い訳も特に思いつかないまま会社に電話した俺は、ボスに風邪を引いたと伝えたんだ。もちろんウソだ。ウソに決まっているじゃないかマイト。俺は何も引いていない。絶対に、完璧にだ。むしろ貧乏クジを引いたのはヤツのほうさ。なのにあの野郎、あんまりひどいようならこじらせる前に病院へ行け、なんてさ、心配そうな声で言うんだよ……。びっくりしたさ。ああ、びっくらこいた。そんなに信用するもんかね、普通。だって、今日休んだら4連休だぜ……。しかも俺だぜ……。普通は疑うだろ……。やっぱりあの、季節の変わり目はわりと風邪を引きやすいから会社をズル休みしやすい説ってやつは、ありゃ本当だったんだな。なにごともやってみるもんだな、まったく。もうしばらくは使えそうだから、同僚のマイキーにも今度教えてやろうと思ってる。絶対に、完璧にだ」

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