映画「しんぼる」の感想

そもそも何ゆえにあの真っ白な部屋を舞台にチョイスしたのかってのがすげえ解せなくて、それが前向きなチョイスだったのか、例えば制作費的な縛りから「仕方なく」まではいかずとも当事者的には「それならいっそのこと」みたいなケツのまくり方だったのか……。少なくとも映画を観終わったあとの印象は「いろいろやりたいけど、いろいろあるみたいだし、じゃあまあ今回はとりあえずシンプルな舞台で撮ってみるか」っていうストーリーが一番しっくりくるなあという感じで、つまりは「真っ白な部屋+不詳の男1人」って設定は松本さんが撮る映画としては最初から相当なハンディキャップがあったんじゃないかなっていうのがこの感想の要約です。
予告編やら CM やらでチラ見した時に刷り込まれた印象どおり、黄色いパジャマの男がとにかく叫びまくる映画でした。脚本に沿うと「部屋から出れねー!」みたいなニュアンスなんですけど、正直中盤からは松本さんの「面白くならねー!」っていう叫び声にしか聞こえませんでした。笑い飯の西田さんだったら「思てたんと違ーう!」ってさじを投げて帰っちゃったかもしれない。それくらい真っ白な部屋のルールはとても単純で、遊びがいも裏切りがいもそれほどなく、10分演り逃げのミニコントをなんで映画に持ち込んでしまったのか不思議でならないっていうのがこの感想の要約です。
ラストはかなり抽象的な演出になるので僕も好き勝手言わせてもらうと、「面白くならねー! これ以上面白くならねー!」と叫び続けた松本さんは、後半から急に意識を無理矢理宇宙レベルにとばして映画の落としどころを探りにかかります。完全に現実逃避オチです。もしくは撮影資金・期間を潤沢に与えてくれなかった偉い人たちや周囲へのあてつけかもしれない。正直ラスト15分くらいはそんな裏ストーリーを勝手に脳内妄想してひとりニヤニヤすることでようやく映画を楽しんで観てる人を装うことができた次第です。っていうのがこの感想の要約です。